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経済が活性化し、持続的に成長していくためには、生産性の高い産業へのリソースがスムーズに進む必要があります。ミクロの視点でみると、スタートアップを創業する無数の起業家たちがこの役割をになっているといってよいでしょう。
今に伝わる中国の名言にこのようなものがあります。
世に伯楽有り、然る後に千里の馬有り 韓愈「雑説」から引用
社会に伯楽(良い馬を見分けられる人)がいてこそ、千里を走る名馬がいる。
現代に置き換えてみると、以下のようになるでしょう。
スタートアップを見分けられる人がいるからこそ、良いスタートアップが生まれる
良いスタートアップ・起業家を見分け、そこに資金を投資するーー
このサイクルを繰り返すことによってミクロレベルでのスタートアップの成長、マクロでの経済全体の活性化につながるはずです。
政府もスタートアップを育てるエコシステム構築を推進しようとしています。
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https://www.meti.go.jp/policy/newbusiness/meti_startup-policy.pdf
スタートアップを生み、育てるためにもスタートアップがどのように評価され、資金調達をされていくかをが知る必要があるでしょう。
筆者はご縁があり、スタートアップ投資および資金調達支援(シリーズA~IPOに向けた資金調達)を経験しています。
この記事では、スタートアップのバリュエーションをどう考えればよいか、実務経験をもとにまとめます。
スタートアップ企業のバリュエーションの特徴
投資をするうえでのスタートアップ企業の特徴は以下の3点です。
- 評価すべき過去がない
- 事業継続に関する不確実性
- スタートアップ企業への投資はエグジットを前提にする
順にみていきましょう!
特徴①:評価すべき過去がない
キャッシュフローの分析を実施する際には、成熟企業であれば過去の成長性や利益の質などから今後の成長可能性や利益水準を評価できます。
スタートアップ企業(特にシリーズA、B企業)は、このような評価をすべき十分な過去がありません。
必然的に、キャッシュフローの予測は、新規性のあるテクノロジーやビジネスモデルに基づく成長ストーリーを評価するものになります。
特徴②:事業継続に関する不確実性
スタートアップ企業の生存年数は創業から5年で15%と言われています。
すなわち、今存在しているスタートアップは85%は消滅するということになります。
将来のキャッシュフローを分析するうえで、このことは重大な意味を持ちます。
市場全体を見渡せば、5年以内に高い確率で事業が立ち行かなくなっているスタートアップが多いことから、将来キャッシュフローの評価においてはリスクを多めに見なければなりません。
特徴③:スタートアップ株を永久に持ち続けることはほとんどない
これからスタートアップ企業に投資する人は、そのスタートアップ企業の価値を決める必要があります。
投資のリターンとしてねらうのは、将来のIPOまたはM&Aによるエグジット。
スタートアップ企業への出資は将来の株式売却を前提としたものになります。
スタートアップ企業のバリュエーションの考え方
上記の特徴に基づいてスタートアップ企業のバリュエーションの考え方をまとめます。
順序としてはまずはキャッシュフローを分析する、そのうえでリスクを織り込んで将来の売却価格を算定する、というプロセスになります。
将来売上のパイプラインについては可能な限り詳細な情報をスタートアップ企業から入手
創業から何年でいくらの売上になったかの推移を類似企業と比較
スタートアップ投資のプロであるベンチャーキャピタルが適用している割引率を適用する。割引率は統計データが存在
実務でよく使われるのはエグジットマルチプル法。エグジット予定時期のマルチプル(バリュエーション÷指標)と財務指標から計算される
キャッシュフローの分析(特徴①:評価すべき過去がない)
過去実績がないスタートアップ企業に対して、ピッチ資料に描かれた美しい成長ストーリーをどのように数字に落とし込んで評価をすればいいでしょうか?
少なくとも、将来売上のパイプラインについては可能な限り詳細な情報をスタートアップ企業(またはリードインベスター)から入手する必要があります。
また、同じような事業・ビジネスモデルの企業の成長スピードと比較をして、納得感のある成長計画となっているかどうかを確認することが必要です。
実務的には、創業から何年でいくらの売上になったかの推移を類似企業と比較をし、将来キャッシュフローへの納得感をえることが考えられます。
リスクの評価(特徴②:事業継続に関する不確実性)
キャッシュフローがある程度腹落ちするものとなったら、リスク=割引率を検討しましょう。
スタートアップ企業の割引率の考え方は、「スタートアップ投資のプロであるベンチャーキャピタルが適用している割引率を適用しよう」というもので比較的シンプルです。
ステージごとにだいたい以下のような割引率が設定されます。
- Startups:エンジェル~アーリー(50-100%)
- First stage or early development:アーリー~シリーズA(40-60%)
- Second stage or expnsion:シリーズA~シリーズB(30-50%)
- Bridge/IPO:シリーズC~(20-35%)
エグジット価値の算定(特徴③:スタートアップ株を永久に持ち続けることはほとんどない)
バリュエーションの基本はDCFであり、その価値の多くを占めるのはターミナルバリュー(計画期間以降のキャッシュフローの現在価値)です。
これは、Gordon Growth Modelと言って永久に企業を保有し続けることを想定したバリュエーション手法になります。
スタートアップの場合には、上述の通り、IPOやM&Aでのエグジットが前提となるので、Gordon Growth Modelとは前提がことなります。
実務でよく使われるのはエグジットマルチプル法というもので、これは、エグジット予定時期のマルチプル(バリュエーション÷指標)と財務指標から計算されます。
エグジットマルチプル法で用いられる財務指標の選択は以下のように整理されます。
- 利益が出ていない企業については、売上高や従業員数(強引であるが技術系スタートアップなどは技術者の数で評価するというのはありうる)
- 利益が出ている企業は、EBITDA(営業利益+償却費)やEBIT(営業利益)
これを類似取引や類似企業のIPO時のマルチプルにかけることによって、エグジット時点での価値が算定できます。
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