この記事では、ファクタリングの会計処理についてまとめます。なお、二社間ファクタリングと三社間ファクタリングでは、二社間ファクタリングが一度預り金を計上するくらいで大きな差異はありません。
また、ファクタリング活用時の手数料の負担について、財務的な観点でも考察します。
ファクタリング活用時の仕訳
ファクタリングは急な資金ニーズに対応するためのワンタイムの資金調達手法であり、定常的に発生するものではありません。また、売上を上げるために直接投入する金銭的価値(売上原価)でもなく、売上を上げるための営業活動(営業費用)でもありません。以上から、ファクタリング手数料は、「売掛債権売却損」という営業外費用の勘定科目で処理されます。
以下では、売上100万円、ファクタリング手数料10万円(手数料率10%)を想定します。
三社間ファクタリングの仕訳
三社間ファクタリングの場合、ファクタリング会社への売掛金売却で取引(仕訳)が完了します。
【売上時】
借方 | 貸方 |
---|---|
売掛金 100 | 売上 100 |
【ファクタリング実行時(即入金を想定)】
借方 | 貸方 |
---|---|
現預金 90 | 売掛金 100 |
売掛債権売却損 10 |
二社間ファクタリングの仕訳
二社間ファクタリングの仕訳は三社間ファクタリングと同じですが、顧客からの入金を預り金として一時的に計上し、ファクタリング会社へ支払いをする点で異なります。
【売上時】
借方 | 貸方 |
---|---|
売掛金 100 | 売上 100 |
【ファクタリング実行時(即入金を想定)】
借方 | 貸方 |
---|---|
現預金 90 | 売掛金 100 |
売掛債権売却損 10 |
【顧客からの入金】
借方 | 貸方 |
---|---|
現預金 100 | 預り金 100 |
【ファクタリング会社への支払い】
借方 | 貸方 |
---|---|
預り金 100 | 現預金 100 |
ファクタリング活用時の財務視点でのTips
規模が小さい会社ほどファクタリング手数料による財務への影響が大きいです。ファクタリングは急な資金ニーズに対応するための有効な調達手法ですが、過度に依存することなく、借入は新株発行などでバランスのよい財務状況を維持する必要があります
想定として売上総利益率20%、ファクタリング実行前の経常利益率5%とします。
上記の例だと、ファクタリング実施時/実行後のPLはこのようになります。
勘定科目 | PL(ファクタリング実行前) | PL(ファクタリング実行後) |
---|---|---|
売上高 | 100 | 100 |
売上原価 | (80) | (80) |
営業費用 | (15) | (15) |
営業外費用 | 0 | (10) |
経常利益 | 5 | (5) |
今後成長投資を予定し銀行と融資の協議を進めているとして、どうしても赤字化は避けたい場合はどれだけの売上を獲得すればよいか考えてみます。
上記の例だと、売上100万円の案件をもう一つ獲得できれば経常利益の赤字は回避できます。ただし、大企業であれば問題ないかもしれませんが、小規模企業で売上100万円は簡単には獲得できません。
長期的な企業の成長のためには、ファクタリングに過度に依存することなく、銀行借入や新株発行による調達も視野にいれて、バランスの取れた財務状況を維持することが必要です。
どのように財務の構えをとるべきかはこちらの記事で考察しています。
その他ファクタリングに関する考察はこちらを参照ください。