金融商品の販売においては、投資家に対して事前に商品に対する説明をすることが求められています。
具体的には、重要事項説明書という書面が提供され、それを投資家が見て取引前にリスクを理解したうえで金融商品を購入することになります。実際の銘柄に投資する場合には、銘柄特有の記載が加わった契約締結時交付書類が説明されます。
この手の説明書って、全部読んだ人いるでしょうか?
大半はほぼ読まずに書面に記載されていることに同意していると思います。
- 文字が小さいから読む気になれない。分量多い
- 読んだとしてもそもそも法律用語よくわからない
- ちゃんとした業者から送られてきたものだったら大丈夫じゃない?
おそらくこれらの要因が組み合わさって、全部読み切る人はいないのではないでしょうか。
本来はきちんと読み理解することが求められている一方で、内容が難解であり読む人がいないーーー
このようなことは、おそらく仲介業者側からしても、そして投資家側からしても望ましいことではないように思います。
非上場株式に投資することにより、他の投資手段よりも高いリターンを得られる可能性があります。その一方で、理解すべきリスク・留意点についてはしっかりと知る必要があります。このような問題意識から、「重要事項説明書」についての何が書いてあるかを解説します。
株式投資型クラウドファンディング大手の重要事項説明書を見ていきます。
重要事項説明書の構成
重要事項説明書の構成はこのような項目が含まれています。順に解説していきます。
- 非上場会社の株式、新株予約権のリスクと留意点
- 株式投資型クラウドファンディング業務について
- 金融商品取引契約に関する租税の概要
- 金融ADR制度
非上場株式、新株予約権のリスクと留意点
①非上場株式、新株予約権への投資について本質的にどのようなリスクがあるのか、②投資額にどのような制限があるのか、③投資対象に関する開示や届け出はどのようになっているのかがまとまっています。
本質的なリスクについての記載
投資をするにあたって理解すべき点として以下のような内容の項目が記載されています。
- 投資対象は非上場株式なので、相場価格がありません。東証のような市場が無いので、売却もすごくしにくいです(流動性が低い)
- 投資先との契約丄、自由に譲渡できないケースがあります。好きなタイミングで売れないかもしれません(流動性が低い)
- ファンディーノで投資した人たちで株式取引できる「株主コミュニティ」については投資先またはファンディーノ起因の理由により解散する可能性があります(流動性が低い)
- 事業がうまくいかなかった場合には、株式の価値がゼロになったり、大幅に減ったりします(元本割れの可能性がある)
- 配当は基本支払われません(配当がない)
流動性が低い
最初の三点については、上場株式でない以上は必然的に受け入れなければならない点になります。
- 売りたくてもすぐ売れる場所がない
- 売りたいときに売れない
- 一応売る場所はあるけど、なくなる可能性もある
元本割れの可能性がある
元本割れの可能性については、非上場株式への投資にかぎらず、株式投資全般的に言えることです。株式の価値は変動するため、投資した金額(払った金額)よりも高い価値となり得をする一方で、低い価値になり損をする可能性があります。株式投資に関する本質的なリスクについて言及しているものになります。
配当がない
スタートアップへの投資は、定期的なリターン(配当)で回収するというよりも、IPOやM&A時で売却するときに一括で回収するものになります。スタートアップ投資のリターンの本質について言及しているものになります。
投資額の制限
重要事項説明書のリスクと留意点に記載されている項目のつづきです。
株式投資型クラウドファンディング自体が、金商法の「第一種少額電子募集取扱業務」に従う必要があり、ここに投資額の制限が規定されています。
この旨、重要事項説明書にも記載されています。
株式投資型クラウドファンディング業務に関する開示や届出
三点目は開示と届け出についてです。
上場株式であれば、有価証券報告書その他の開示要件や監査が求められています。一方で、株式投資型クラウドファンディング業務については、法律が定める内容・項目での開示・監査は義務付けられていません。
この点については、各株式発行会社から提供された情報をある程度信用して投資の判断をすることになります。
特定投資家(プロ投資家)と一般投資家(個人投資家)を区分しているのはこのような仕組みも背景にあります。
上場会社と比較して少ない情報で投資の判断ができる、または投資のリスクを受け入れられるのが特定投資家(プロ投資家)という位置づけになります。リスクをコントロールできるとみなされ、特定投資家については投資額の上限はありません。
一方で、非上場株式への投資は一般投資家(個人投資家)には難易度が高く、一社一年あたりの投資額を50万円に制限したほうが投資家保護になると判断されているということになります。
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