株式には普通株式と種類株式が存在します。株式の権利は、
「みんな知っているようでよく理解されていない」
ものの典型例です。
この記事では普通株式と種類株式の違いについてしっかりと解説します。
種類株式については会社法上認められている9つの権利についてまとめます。
まずはじめに、
「株式」には、普通株式と種類株式の二種類が存在
します。
上場されている株式は通常は普通株式であり、スタートアップ企業などの非上場企業の株式は普通株式以外にも種類株式が発行されます。
種類株式はスタートアップの資金調達時に最も活用されている株式です。
下の図は、スタートアップがどのように資金を調達しているかを示すものになります。
多い順でいくと、
・種類株式
・普通株式
・新株予約権付社債
の順番になります。この記事では、普通株主の権利と種類株式の違いについて解説します。
普通株式の種類株式の違い
普通株式と種類株式の違いを考えるうえでのポイントは以下のとおりです。
- 普通株式は、通常の権利を持っている株式
- 種類株式は、好きな権利をえらべる「特別な」株式
- 種類株式の権利は、9種類の権利からえらぶことができる(会社上第108条に列挙されている)
- 種類株式の方が、好みに応じてどの権利をつけるか決められるので価格が高い
種類株式は好きな権利を付与することができる分、価格が高くなります。
ここからは、普通株式と種類株式の権利についてまとめます。
普通株式の権利
普通株式の権利は、以下のように、どれだけ株式をもっているか(持分比率)により異なります。
持分比率 | 株主の権利 |
---|---|
1株保有~ | ・配当を受け取れる ・株主総会の議案に対して投票できる |
1%~ | ・株主総会に議案を提案できる |
3%~ | ・会計帳簿を閲覧できる ・株主総会の招集を請求できる ・取締役・監査役の解任を請求できる |
33%超 | ・特別決議(2/3以上賛成で可決)を単独で拒否できる |
50%超 | ・普通決議(1/2以上賛成で可決)を単独で可決できる ・これにより、以下を単独で可決可能 ・配当の決定 ・取締役・監査役の選任、解任 |
66%超 | ・特別決議(2/3以上賛成で可決)を単独で可決できる ・これにより、以下を単独で可決可能 ・定款の変更 ・増資、M&Aなどの承認 |
通常の「株式」とは上場株式のことを意味することが多く、その場合には個人株主が保有できる比率はもっぱら1%未満になることが多いです。
この場合、普通株式の権利とは、配当を受け取る権利と株主総会に参加し議題に投票する権利(+会社がつぶれたときの財産分配権)になります。
種類株式の権利まとめ
会社法上、以下の9つの種類のものが列挙されており、発行時に好きなものを選ぶことができます。
種類株式の種類 | 種類株式の権利 |
---|---|
剰余金の配当 | ・剰余金の配当がまったくない、または普通株式と比べて多い |
残余財産の分配 | ・会社清算のときに優先的に残余財産が分配される |
議決権制限株式 | ・議決権がない、または制限される |
譲渡制限株式 | ・保有株式を売却するときに発行会社の承認が必要 |
取得請求権付株式 (プットオプション付株式) | ・株主が発行会社に対して株式買い取りを請求できる(売る権利=プットを持つ) |
取得条項付株式 (コールオプション付株式) | ・発行会社が株主から強制的に買い取れる(買う権利=コールを持つ) |
全部取得条項付株式 | ・特別決議で株主が合意すれば発行会社が株式をすべて買い取れる |
拒否権付株式 (黄金株) | ・発行会社の重要事項の決議を拒否できる |
役員選任権付株式 | ・取締役、監査役を選任できる |
スタートアップで活用される新株予約権の仕組みとは?活用のトレンドとあわせて解説✒️ 新株予約権はスタートアップファイナンスでよく活用されるスキームです。足元のトレンドと仕組みについて解説します。