生成AIのアンスロピックへのアマゾンの出資:MS/OpenAI連合への対抗軸は形成できるか?資金調達の推移を追った

2023/9/25、アマゾンによるAIスタートアップ、アンスロピックへの最大40憶ドルの業務資本提携が公表されました。

ChatGPTにはマイクソフトが出資しています。グーグルによる「Bard」、イーロン・マスク氏による「TruthGPT」など、生成型AI業界の興隆がいちじるしいです。このようなうねりの中から、人材が生まれ起業することで将来新たなサービスを開発するスタートアップ企業が生まれてくるのだと思います。

この記事では、アンスロピックの過去の資金調達について考察します。

主なポイントは以下のとおりです。

  • OpenAIの開発メンバーが立ち上げた会社であり、創業時から注目されていた
  • アマゾンによる出資までは、グーグルからの調達を受けるなど全方位外交で資金調達を実施。事業の可能性を広げながら、最終的にはアマゾンを選択

アンスロピックの概要・背景

アンスロピックは、「ChatGPT」を提供するOpenAIと同様に生成型AI(テキストや画像などを自動生成するAI技術)を開発するスタートアップ。チャットボット「Claude(クロード)」を提供

りゅーせん先生

論理性はChatGPT、会話の自然さ・共感性はClaudeが優っているようです

アンスロピックは2021年、OpenAIの開発メンバーにより創業されました。

創業した2021年時点で1.2億ドルの調達を実現しており、創業当初から注目されていたのがわかります。

アンスロピックの資金調達実績を見ていきましょう。

独立を考えるITエンジニアの方へ【Pe-BANK】

アンスロピックの資金調達実績

<アンスロピック資金調達の総括>

  • グーグル、セールスフォース、SAP、SKなど多方面からの事業会社の出資を受け入れている
  • 特定の事業会社に肩入れするのではなく、それぞれで事業拡大の可能性を模索する「全方位外交」を展開
  • アマゾンのデータセンター、AIチップの活用を企図
  • アマゾン出資後も経営体制に変わりはない(アマゾンはマジョリティを取得しない)
  • このままアマゾンとともに事業成長させ、IPOを狙う可能性が高い

フリーランス・個人事業主限定の請求書買取サービス「labol(ラボル)」

Round
2021年5月:シリーズA資金調達で1.2億ドルを調達

リードインベスター:スカイプの創業者、Jaan Tallin
調達資金の使途:AIシステムの開発と従業員の獲得費用

Round
2022年4月:シリーズB資金調達で5.8億ドルを調達

リードインベスター:暗号資産取引所FTX(2022年11月経営破綻)
調達資金の使途:大規模研究設備
増資時従業員は40人

FTX債権者はFTXが保有するアンスロピックの株を売って、売却金額を分配しようとしていたものの、アマゾン出資により株価上がりそうなのでいったん売却はストップしたようです

Round
2023年2月:グーグルラウンド。3億ドルを調達、評価額は30憶ドル

グーグルとの資本業務提携。グーグルのプラットフォームを使ってAI開発

シリーズの合間に事業会社向けにやる資金調達ラウンドは、通常は投資企業の名前を冠した名称になります。この場合はグーグルラウンド

Round
2023年5月:シリーズC調達ラウンド。4.5億ドルを調達、評価額は41憶ドル

リードインベスター:Spark Capital
その他投資家:アルファベット(グーグル)、セールスフォース、Zoom、Sound Ventures

Round
2023年7月:SAPラウンド

取引条件不明

Round
2023年8月:SKテレコムラウンド。1億ドル調達

バリュエーションは不明

Round
2023年9月:アマゾンラウンド。最大40億ドルを調達

40憶ドルを上限として、アマゾンが出資拠出を約束

あわせて読みたい
【スタートアップ投資】企業価値はどのように決まる?価値算定の基本手法を解説✅ スタートアップの育成が政府の重点領域になっています。スタートアップの育成により経済を活性化していくには、価値のあるスタートアップを評価し資金を投入していく必要があります。この記事ではスタートアップの評価のきほんを解説します。
あわせて読みたい
プレマネーとポストマネーがわかればスタートアップファイナンスがわかる✅図解 – 企業の価値が上... 資金調達を繰り返して成長するスタートアップにはプレマネーとポストマネーという考え方は存在します。この記事では、スタートアップの価値がどのように増えていくか、もともといた投資家と新しい投資家の違いに注目して解説します。
よかったらシェアしてね!